30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです
ドアの陰から中の様子を確認してみると、カップとコーヒー豆を準備しているのが見えた。
どうやらコーヒーとチョコレートで休憩を取るみたいだ。

大翔がコーヒー豆を準備したところで、偶然を装って給湯室のドアを開ける。
「あ、いらしたんですね」

少し声が上ずったけれど、大翔は気がついていない。
「あ、君はペンを拾ってくれた……」

「羽川美加です」
美加はすぐに自己紹介をした。

ここでちゃんと覚えてもらうことができれば、一歩前進だ。
「羽川さんか。チョコレートをありがとう。今から食べようと思うんだ」

そう言っているそばからコーヒーメーカーが動き出す。
時期に豆のいい香りが給湯室に立ち込めてくるはずだ。
< 84 / 237 >

この作品をシェア

pagetop