30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです
定食プレートを手に席を探している大翔。
美加はとっさに顔をそむけて気が付かれないようにしていた。

「ちょっと美加、大丈夫?」
そんな美加を心配して麻子が声をかけてくるけれど、美加は左右に首を振った。

人気者を好きになったという自覚はあった。
ライバルが多いことだって知っていた。

だけどまさかみんなここまで大翔にベッタリだとは思っていなかった。
ギリギリ名前を覚えてもらえたかもしれないというだけで喜んでいた自分が、急に惨めに見えた。

30歳にもなって恋愛経験ゼロだったのが、ダメだったんだろうか。
すっかり負けてしまった気持ちになってジワリを涙が浮かんでくる。

こんなところで泣くつもりはなかったけれど涙が溢れてきて止まらない。
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