優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「さっき電話で話した女ってのがコイツです」

 泰典が迅にそう樹奈を紹介すると、迅は女から手を離し、樹奈にこちらへ来るよう手招きをする。

「こっちへ来い。お前、花房 詩歌を知ってるのか?」
「は、はい。知ってます……けど」
「そいつは今、何処にいる?」
「……その、何処にいるかは、分かりません」
「はぁ? 分からねぇ?」
「そ、その、彼女は……同じ店で働いていた子で」
「店?」
「『PURE PLACE』というお店です」
「へぇ」
「ただ、彼女は今、実家の母親が病気とかで暫く休んでいます」
「……で、アンタは彼女が何処に住んでるのかは知らねぇと?」
「は、はい……」
「アンタ、女に連絡は取れるのか?」
「……今は、無理かもしれないです」
「何でだ?」
「その……彼女の事を面倒見ている男の人が居て、私は今、その人に警戒されているから」
「面倒見てる男……そいつはどこの誰だか分かるか?」

 迅にそう問われ、樹奈は一瞬話す事を躊躇った。それは他でも無い郁斗の事だから。

「おい、聞かれたらすぐに答えろ。もう一度聞く。その男はどこの誰だ?」

 しかし、迅は殺気立った瞳で樹奈を睨み付け、質問に答えるよう要求する。

 そんな迅に恐怖を感じた樹奈は、

「……あ、あの……彼はその……夜永 郁斗と言って……昔はホストをやっていて、その後はスカウト業に転身したと、聞いてます……。それと、『PURE PLACE』の経営者とも繋がりがある人……です」

 自身が知りうる限りの情報を迅に話したのだ。
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