優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 それからすぐに恭輔が郁斗の元へやって来た。

 小竹と美澄は組員が病院へと連れて行き、郁斗は恭輔と共に詩歌を捜索している組員と連絡を取りながら自らも捜索し始める。

 その時、樹奈から郁斗へ着信が入った。

「樹奈? お前今何処にいる?」
『……郁斗さん……』

 電話に出ると樹奈は震えているようで、言葉は途切れ途切れで今にも泣きそうな声をしている。

「おい、今何処にいるんだ?」
『……分からない……けど、多分、繁華街のどこかの……ビルだと思う……』
「樹奈、周りに誰か居ないのか?」
『居ない……。今は、一人』
「そうか。分かった。心配するな、お前の捜索もこっちで手配するから、もう少し待っていてくれ」
『……郁斗さん、白雪ちゃんのこと、だけど……』
「居場所を知ってるのか?」
『ううん、でも、もしかしたら……『UTOPIA』っていうBARに居るかも……』
「『UTOPIA』? 分かった、調べてみる。樹奈.必ず助けるから心配しないで待ってろ」
『……うん、ありがとう…………郁斗さん…………ごめんね……』

 それだけ言って電話を切った樹奈。

 何故彼女は謝ったのか、それは、この電話が迅の指示によって掛けさせられたものだったから。

 そうとは知らない郁斗は恭輔と共に『UTOPIA』へ向かって行くも、先程の樹奈からの電話が気になる恭輔は密かに誰かへメッセージを送っていた。
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