優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「相変わらず、紳士だよな、お前は」
「そうか? まあ、それが売りなんでね」
「はは、変わってねぇな、お前は」

 郁斗としては、ひとまずこの状況を維持しつつ、これから来るであろう恭輔や応援を待ちたいと思っていたのだが、迅がそんなものをいつまでも待つはずはない。

「悪いが、俺はこれから人と会う約束をしてんだ。取引だからな、遅れると信用問題に関わるんだわ」
「へえ? それはそれは。けどな、俺も引けねぇんだよ。分かるだろ?」

 お互い一歩も引かない緊迫した状況が続く。

 相手の出方を窺っているようだ。

 それが数分程続いただろうか、先に口を開いたのは――

「さてと、そろそろ終わりにしようぜ。埒が明かねぇから、勝負をしよう」

 勝負をしようと持ち掛けた迅だ。

「勝負?」
「ああ。これさ」

 言いながら迅は懐からもう一丁の銃を取り出した。

 それは回転式拳銃(リボルバー)

「……へぇ? ロシアンルーレット……って訳か?」
「流石、察しが良いな。これなら全ての決着が付いて良いだろ?」
「まあ、確かに決着は付くはな、どっちかが死ぬっていう結末で」

 いくら勝負を付けるにしても、これはどうなのか。目の前で行われる会話に詩歌は声すら出せず、ただただ怯えていた。
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