優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「お前は市来組の夜永だったか? 探していた女を匿ってた糞野郎はよぉ!」

 そして、郁斗の方に視線を移した黛は言いながら銃を取り出すや否や、何の躊躇いもなく郁斗の手首目掛けて弾を撃ち込むと、郁斗の手から拳銃を落とした。

「……っ、」
「郁斗さん!? いやぁっ!!」

 撃たれた場所からは血が流れ、それを見ていた詩歌は悲痛な叫び声を上げた。

「おい、迅。さっさとその女を運べ」
「あ、ああ。分かってる」
「止めろっ!」

 郁斗は痛みを堪えつつ、詩歌を守る為近付こうとするも、

「うるせぇ。次動いたら女を殺す。いいのか? コイツは大切なんだろ? なら、その場で大人しくしてろ」
「……っく……」

 黛は迅に抱えられた詩歌に銃を向けながら郁斗を牽制する。

「迅、早く行け」
「お、おう」
「い、郁斗さん!!」
「詩歌!」

 迅の姿が見えなくなった瞬間、郁斗が動こうとした、その時、

「女の事は心配すんな。俺の元で可愛がってやる。花房や四条は始末するから、もう誰も女を探す奴はいねぇよ」

 笑みを浮かべながらそう言い放った黛は、郁斗の心臓を狙って引き金を引き、パンッという乾いた音と共に郁斗の体が崩れ落ちていくのを見届けてその場を後にした。
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