優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 一方、撃たれて倒れた郁斗の元へ恭輔が手当を終えた美澄や小竹を連れて現場に辿り着くと、血溜まりの中に倒れている郁斗を見付けた瞬間、三人の顔から血の気が引いていく。

「郁斗!?」
「郁斗さん!!」
「しっかりしてください!」

 状況から見て、郁斗はもう死んでしまったのではないか、恭輔が郁斗の身体を抱き起こした――次の瞬間、

「…………っ…………」

 小さく呻き声を上げながら眉を(しか)めた郁斗を見て、まだ生きてる事を知ると三人は安堵した。

「郁斗! 平気か?」
「…………、恭……輔、さん……」
「すぐに病院に運ぶ。おい美澄、車をすぐ側に付けろ」
「はい!」
「小竹、お前は車にあるタオル持ってこい、止血に使う」
「はい!」

 恭輔に指示された二人は急いで車に戻って行く中、徐々に状況把握をした郁斗が苦しそうにしながらも辺りを見回そうとする。

「おい郁斗、動くな」
「……、し、いか……は……」
「残念ながら、ここには居ないようだ」
「……恭輔……さん、詩歌は、黛の……野郎に……」
「黛? アイツがやったのか?」
「そう、っす……」
「どうやら急所は外れているようだが、弾が残ってるかもしれねぇ。とにかくもう話すな、動くな」
「けど……、このままだと、詩歌が……」
「俺の方ですぐ捜索する。とにかくお前は病院が先だ!」

 再び美澄や小竹がやって来たのと同時に郁斗の意識は遠のいていき、詩歌を心配したまま意識を失ってしまった。
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