優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
STORY6
 どうして、こんな事になってしまったのだろう。

 泣いても泣いても涙が止まらない詩歌は、黛の所有するマンションの一室に連れ込まれると、窓のない布団だけが敷かれた物置部屋のような所へ押し込まれ、手を拘束されたまま寝かされていた。

(……私が、いけなかったんだ……危険だって言われていたのに、マンションを出て……勝手な行動をしたから……だから、郁斗さんだけじゃなくて、美澄さんや小竹さんにまで……)

 自分の浅はかな行動のせいで、郁斗が死に、美澄や小竹の安否すら分からない。

 そして自身は悪魔のような男に囚われ、どうする事も出来ない状態に陥っている。

 詩歌にとって今の状況は、死よりも辛いものだった。

(……そもそも、私が家出なんてしなければ、誰も不幸になる事は……無かったんだ……)

 全ては義父や婚約者の手から逃れたくて行動した『家出』が全ての原因だと気づいた詩歌は、ただ自分を責め続けていた。

「…………郁斗さん……ごめん……なさい……。ごめん……なさい……っ」

 届かない思いを口にした詩歌は、彼を思って目を閉じると、ひたすら謝り続けていた。
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