優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「勿論、育てて貰った恩もあるので政略結婚も仕方の無い事だと、初めは受け入れてました。けど……私の相手となる方は義父以上に利益優先な人間で、私を妻に迎えたら……お仕事の利益を得る為に……接待には必ず同行して……男の方の相手をするようにと、言われました。私はそんな風に使われるのが嫌で……家出を決意したんです」
そして更に、詩歌の結婚相手となる男は彼女の美しい容姿に目をつけ、接待で必ず契約を結べるよう相手の要求に何でも答えさせようとしていたのだ。
「それは、逃げたくもなるね」
そんな詩歌の話を聞いた郁斗は心底同情する。
「ただ、私が逃げようとしている事に勘づいたのか、最近では使用人たちをも使って私を監視していて、一人で家を出る事すら許されない生活が続きました。だけど昨日の夜、義父の会社でトラブルがあったようで慌ただしく会社へ出掛けていき、たまたま使用人数人が夜に家を空けていた事もあって監視が手薄だったんです……」
「それで急いで家を出て東京行きの新幹線に乗ったんだ?」
「はい。それなので大した荷物もお金も、持っては来れなかったんです……」
詩歌はひと通りの経緯を話終えると、そのまま黙り込んでしまう。
そんな彼女を尻目に郁斗は煙草を箱から取り出し口に咥えて火を点けると、ゆっくり煙を吸い込んでから、ふぅーっと煙を吐き出した。
それを何度か繰り返した後、
「それで、詩歌ちゃんはこれからどうするつもりなの?」
依然として黙ったままの彼女に、そう問い掛けた。
そして更に、詩歌の結婚相手となる男は彼女の美しい容姿に目をつけ、接待で必ず契約を結べるよう相手の要求に何でも答えさせようとしていたのだ。
「それは、逃げたくもなるね」
そんな詩歌の話を聞いた郁斗は心底同情する。
「ただ、私が逃げようとしている事に勘づいたのか、最近では使用人たちをも使って私を監視していて、一人で家を出る事すら許されない生活が続きました。だけど昨日の夜、義父の会社でトラブルがあったようで慌ただしく会社へ出掛けていき、たまたま使用人数人が夜に家を空けていた事もあって監視が手薄だったんです……」
「それで急いで家を出て東京行きの新幹線に乗ったんだ?」
「はい。それなので大した荷物もお金も、持っては来れなかったんです……」
詩歌はひと通りの経緯を話終えると、そのまま黙り込んでしまう。
そんな彼女を尻目に郁斗は煙草を箱から取り出し口に咥えて火を点けると、ゆっくり煙を吸い込んでから、ふぅーっと煙を吐き出した。
それを何度か繰り返した後、
「それで、詩歌ちゃんはこれからどうするつもりなの?」
依然として黙ったままの彼女に、そう問い掛けた。