優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 けれど、

「おい、お前……夜永が生きてるって分かって随分嬉しそうだな?」
「……当たり前に、決まってるじゃないですか……」
「そうか。そんなに嬉しいか。アイツもきっと、お前の無事を願ってるだろうなぁ」

 不気味な笑みを浮かべる黛を前に、思わず恐怖を感じた詩歌。

「どうした? 俺が怖いか?」
「…………っ」
「俺はさっき、お前にどうするか選ばせてやると言ったな。けど、あれは撤回する」
「え……?」
「夜永が生きてるんじゃ、お前を外に出すわけにゃ行かねぇからな、風俗に売るのは無しだ。それに、殺しちまうのも勿体ねぇし、殺すにしても、夜永の目の前で殺る方が面白いからなぁ」
「…………っ」
「とりあえず、お前はまだ生かしておいてやる。その代わり、俺を楽しませろよ」
「……え?」
「女が男を楽しませるっつったら、分かんだろ?」
「…………い、いや……」
「何だ? お前、処女か? はは、こりゃいいなぁ、夜永とはまだヤッて無かったのかよ? アイツ、女を傍に置いておきながら手も出さねぇとか、惜しい事するなぁ。流石、『紳士』を語るだけの事はあるわ」

 黛は怯える詩歌をゆっくり追い詰める。

「残念だな? 初めてが俺となんて」
「……や、だ……、やめて……っいくと、さん……助けて……」

 詩歌はこれから自分がどうなるか悟ると恐怖で身体が震えるのと同時に、郁斗の名前を呼んで助けを求めていた。
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