優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 どうにかして黛から郁斗への興味を奪いたいと思っても、肝心の彼の姿は無い。

(……もしかして、もう、郁斗さんを呼び出しているの? 私のせいで、また……彼を危険な目に遭わせる事に……そんなの、嫌……)

 そう思っていた、その時、

「お、ようやく目が覚めたか。悪かったな、手加減してやれなくて」

 悪びれた様子も無く、黛が姿を現したのだ。

「何だ? すっかり怯えちまって。まあ、無理はねぇか。それより、お前が寝てる間に市来組と連絡を取った。直に夜永が指定した場所に来るぜ」
「郁斗さんが……?」
「ああ、嬉しいだろ?」

 黛の言葉に、首を横に振る詩歌。

「……お願いします、郁斗さんには何もしないで……私ならどうなってもいいから……だから……お願いします……」

 これ以上自分のせいで誰かが苦しむ姿を見たくない詩歌は必死に頼み込むと、

「……それなら、俺に抱かれろ。そして、俺を満足させろ。そうすれば考えてやってもいい。但し、少しでも嫌がるようなら当初の予定通り、夜永の目の前でお前を犯す。いいな?」

 どうせ無理だろうと言わんばかりの表情を浮かべながら、詩歌に迫っていく黛。

「…………分かり、ました。好きにしてください……それで郁斗さんに迷惑が掛からないのなら、それが一番ですから」

 詩歌は大丈夫だと自分に言い聞かせるように心を落ち着かせると、黛に自分の全てを捧げる決意を固め、彼に身を委ねる事にした。
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