優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 一方郁斗は、

「……何でお前が居るんだよ、迅」

 指定されたマンションの一室にやって来ると、そこには黛ではなく迅が一人で待っていた。

「郁斗、お前もなかなかしぶとい奴だなぁ。撃たれて生きてるとかさぁ」
「そんな事どうでもいい。黛はどこだ?」
「ここには居ねぇよ。俺は金で雇われてここでお前を待ってた。今度こそ、勝負しようぜ?」
「悪いが今は受けられねぇ。負けるつもりはねぇが、万が一俺が死んだら、詩歌を助けられねぇからな。今は確実な方法を取りたいんだ」
「お前、変わったな? 女が出来るとそうも変わるもんかねぇ。面白味がねぇよ」
「何とでも言えよ。それより、黛に金で雇われたんだろ? いくらで雇われた? 俺ならその倍は出すから、俺に付かねぇか?」
「くく、お前、プライドねぇのかよ? いくら何でも必死過ぎ。そこまでするか? 花房 詩歌はお前の女って訳じゃねぇんだろ? もう放っておけばいいじゃねぇか」
「それは出来ない」
「惚れてるからか?」
「……まあな」
「そうか、惚れてんのか。けど、そんなお前に一つだけ教えてやるよ」
「何だ?」
「さっき黛から連絡があってさぁ、あの女、黛に犯されたぜ? 可愛げもねぇつまらねぇ女だってボヤいてた。しかも、処女だったんだろ? 残念だったなぁ、惚れてたんなら先にヤッとけば良かったのに」

 迅のその言葉に一瞬郁斗の目の前は真っ白になった。

(……詩歌……悪い、また辛い思いさせちまったな……)

 そして、自分が早くに助けてやれなかった事でまたしても悲しく辛い思いをさせた事を悔やみ項垂れるも、これ以上時間を掛けられないと思い直し、

「……頼む、迅。黛の居場所を教えてくれ。金なら、いくらでもやるから…………この通りだ」

 何とかして黛の居場所を教えてもらおうと迅相手に土下座をしたのだった。
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