優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「や、やだ……」
「嫌がるなって言ったよなぁ?」
「それは……あの時だけじゃ……」
「ああ? んな訳ねぇだろうが! ずっとだよ! 嫌がるならいいぜ? 今すぐ夜永をここへ呼び寄せるか? 見られながらされてぇのかよ? なぁ?」
「嫌っ……もう、やだっ!」

 上から押さえつけられて動きを封じられた詩歌が涙を浮かべて声を上げた、その時、ピンポーンと来客を知らせるインターホンの音が鳴り響く。

「何だ?」

 その音に面倒そうな顔をする黛。

 もしかしたらもっと声を上げれば外へ届くかもしれないと詩歌が声を上げかけるも、

「た、助け――」
「おい、黙れ。」
「んんっ!!」

 すぐに口を手で覆われてしまう。

 そして、再びインターホンが鳴った事で相手は何か用があると感じた黛は詩歌に、

「いいか? 声を上げたきゃ上げればいい。けどな、お前が声を上げれば今来てる誰かはお前のせいで……これの犠牲になる」

 そう告げながら、懐に隠していた拳銃を取り出した。

「それでも良ければ大声を出して助けを求めろよ」

 黛のその言葉に項垂れる詩歌。他人を犠牲にして自分が助かる事を選ばないと分かっているのか、呆然とする彼女をよそにカメラで相手の姿を確認すると、そこには大手宅配業者の格好をした男が映っていた。

 帽子を目深にかぶっていて表情までは確認出来ず、黛は怪しみながらボタンを押して応対する。

「何だ?」
『黛様に、周藤(すとう) (じん)様よりお届け物です』
「迅から? 今開ける」

 届け物が迅からという事が気になった黛は拳銃を手にしたまま玄関へと歩いて行った。
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