優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 そこで何かに気付いた黛が郁斗へ視線を向ける。

「夜永、テメェまさか……」
「ようやく気付いたか? 俺は言ったはずだぜ? 策も無しに乗り込んできたりしねぇって。お前はもう、詰んでんだよ。黛」
「なっ――」

 郁斗がそう言い放ち、黛が何が言いかけたのとほぼ同時に、鍵の開いている玄関から人がなだれ込んで来る。

「黛、お前の処分が決まった。これまでの行いの数々、きっちり落とし前つけてもらうからな。覚悟しておけ」

 その先頭には蒼龍と恭輔が居て黛を取り抑えようとするも、

「……クソっ……クソがぁ!!」

 自暴自棄になった黛は銃を構えていない方の手でナイフを取り出すと、近付こうとする組員たちに振り回して威嚇する。

「近付くんじゃねぇ! それ以上近付いてみろよ? この銃で、夜永たちを撃つ」

 この騒ぎの中でも黛の構えた銃の銃口は郁斗たちに向いていて、誰かが近付こうものならすぐに引き金を引くと言う。

「郁斗さん……っ」
「大丈夫だよ、絶対、守るから」

 郁斗は怯える詩歌を背に庇うと、窓から見えない位置に詩歌を立たせ、黛に声を掛ける。

「黛、もう諦めろよ。お前に逃げ場はねぇんだから」
「うるせぇんだよ! それならお前らも道ずれに死んでやる!!」

 逃げ場も無いならいっそ、郁斗たちを道ずれに死ぬと彼らに近付いた、その時、

「うっ…………」

 外から窓ガラスを突き破った弾が黛の右腕に命中して、彼は呻き声を上げながらその場に倒れ込む。

「今だ!」

 そして、恭輔のその声と共に人々が黛を押さえつけ、彼は確保された。
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