優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「…………助かった……の?」

 その光景を呆然と見つめていた詩歌がポツリと呟くと、

「ああ、助かった。もう大丈夫だよ。ごめんね、詩歌ちゃん。沢山辛い目に遭わせて」

 そんな彼女の身体を抱き締めながら、郁斗は言った。

「……っ、そんなこと、ない……元はと言えば、私が……悪いの……っ、ごめん、なさいっ」

 そんな郁斗の優しさに触れた詩歌は安堵した事から大粒の涙を瞳に溜めて、首を横に振りながら自分が悪かったと謝った。

「詩歌ちゃんのせいじゃないよ。だから、泣かないでよ」
「……だって、私のせいで、郁斗さん、撃たれて……私、死んじゃったかと思って……っ、美澄さんや、小竹さんにも、迷惑かけて……っ」
「俺も、美澄も小竹も無事だったんだから、心配無いよ。さ、もう帰ろう」
「うっ、ひっく……」

 泣きじゃくる詩歌を郁斗が宥めていると、恭輔と共に美澄と小竹がやって来た。

「郁斗、無事だったか」
「はい、お陰様で」
「郁斗さん、詩歌さん!」
「無事で良かったです!」
「……っ、皆さん、ごめんなさい、私のせいで……」
「いや、寧ろ俺たちこそすんません、詩歌さんを守りきれなくて」
「不甲斐ないです、すみませんでした」

 お互いに悪かったと言い合っている中、

「ひとまずここから出るぞ。話は戻ってからにしろ」

 恭輔の一声で部屋を出る事になった一同。

 恭輔、美澄、小竹に続いて詩歌と共に出ようとした郁斗だったが突然苦痛に顔を歪めると、

「郁斗さん?」

 その場に崩れ落ちるようにしゃがみ込んでしまった。
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