優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「……あれ? 私、いつの間に……」

 眠るつもりが無かった彼女は自分がベッドの上で眠っている事に気付いて勢い良く起き上がると、郁斗の姿を探す。

 すると、

「おはよう、詩歌ちゃん」
「郁斗……さん」

 ベッドの上で身体を起こしていた郁斗と目が合い、おはようと声を掛けられた事に驚き一瞬反応が遅れたものの、

「郁斗さん…………郁斗さん!」

 彼が目を覚まして身体を起こしている、その事にハッキリと気付いた詩歌は急いでベッドから下りると、すぐさま郁斗の元へ駆け寄った。

「もう、大丈夫なんですか?」
「うん、まあまだ多少痛みはあるけど、これくらいなら大丈夫だよ」
「無理しちゃ駄目です! まだ寝ていた方が……」
「平気だよ。寝てばかりも身体が痛くてさ。こうしてる方がいくらか楽なんだよ」
「そうですか、それなら、分かりました」

 身体を起こしている方が楽だという本人の意見を尊重して納得した詩歌に郁斗は、

「詩歌ちゃん、もう少しこっちに来て」

 自分の方へ近付くよう呼び寄せる。

「はい?」

 それに従い傍に寄った詩歌の身体を郁斗は自身の胸に引き寄せ、

「い、郁斗さん!?」

 驚く詩歌をよそに、彼女の身体をギュッと抱き締めた。
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