優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 触れるだけのキスで二人の唇は熱を帯び、徐々に息づかいが荒くなる。

「……っはあ、……ん……」

 何度も角度を変え、互いに求め合うキスへと変わっていく。

 初めこそぎこちなかった詩歌も、徐々に慣れてきたのか郁斗に応えようと彼のペースについていく。

 そして、互いの身体が疼き、キス以上に進みたいと思ってしまう。

 けれどここは病室で、郁斗はまだまだ安静が必要だ。

 それをお互いに感じ取ったのか激しいキスから軽いキスへと戻っていき、名残惜しげに互いの唇を離した。

「……はぁ……、っ」
「これ以上しちゃうと、止められなくなっちゃうね」

 郁斗と同じ気持ちだけど、それを言葉にするのは少し恥ずかしい詩歌はこくりと首を縦に振って頷いた。

「……詩歌ちゃん、ちょっと順序が逆になっちゃったけどさ……」
「……はい?」
「俺、詩歌ちゃんの事、好きなんだ」
「郁斗……さん」
「俺の、彼女になってくれるかな?」
「……私……」
「余計な事は何も考えなくていい。詩歌ちゃんの素直な気持ちを教えて欲しい。俺の彼女になって、傍に、居てくれるかな?」

 そんな郁斗の問い掛けに詩歌は、

「……私も、郁斗さんが……好きです。 離れたくない……ずっと、傍に置いてください……もう、離さないで……」

 再び涙を零しながら、郁斗の腕の中へ飛び込んだ。
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