優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「あの……すみませんでした、軽率な事を口にしてしまって……。私、帰ります」
そして自身の言葉を反省し、やはり自分の力で何とかしようと荷物に手を掛けた、その時、
「いいよ、匿ってあげても。行く宛て無いでしょ? ここに居る間のキミの安全は、俺が保証するよ」
郁斗は詩歌をこの部屋に置いてもいいと言ったのだ。
「……え?」
「ここを出て、自分で何とかしようって思ってるんでしょ?」
「そ、それは……」
「酷い事を言うようだけど、キミじゃあ無理だよ。だから、ここに居るのが一番」
郁斗の申し出は有難いし、自分の力でやるなんて初めから無理なのも詩歌は重々承知していたけれど、先程郁斗の怖い一面を知ってしまった今、彼の側に居るのも怖くなった彼女は一刻も早くこの場を去りたいと思っていたのだ。
「……ごめんなさい、お心遣いは有難いんですけど、私……」
「そんなに怖がらないでよ。さっきのはあくまでも演技。詩歌ちゃんに世間の厳しさを分かって欲しかっただけだよ。だから、俺を信じて?」
詩歌が自分に恐怖を感じている事が分かっていた郁斗は彼女の頭に手を置くと、優しく撫でながら不安を和らげようとする。
それには一瞬驚き身体を強ばらせた詩歌だったけれど、彼の優しさが伝わってきたのか徐々に力は抜けていく。
(……私、この人を……信じても、いいのかな?)
未だ本当の郁斗が良く分からない詩歌だけど、行く宛てもない、仕事も住む場所も見つかるか分からない今の自分の立場を考えると、ここは彼を信じて世話になる方が良いと思い直し、
「あの……迷惑をかける事も沢山あると思いますが……よろしくお願いします」
郁斗の元で世話になる事を正式に決めた詩歌は深々と頭を下げてお願いした。
こうしてこの日、詩歌はまだ見ぬ危険な世界に足を踏み入れたのだった――。
そして自身の言葉を反省し、やはり自分の力で何とかしようと荷物に手を掛けた、その時、
「いいよ、匿ってあげても。行く宛て無いでしょ? ここに居る間のキミの安全は、俺が保証するよ」
郁斗は詩歌をこの部屋に置いてもいいと言ったのだ。
「……え?」
「ここを出て、自分で何とかしようって思ってるんでしょ?」
「そ、それは……」
「酷い事を言うようだけど、キミじゃあ無理だよ。だから、ここに居るのが一番」
郁斗の申し出は有難いし、自分の力でやるなんて初めから無理なのも詩歌は重々承知していたけれど、先程郁斗の怖い一面を知ってしまった今、彼の側に居るのも怖くなった彼女は一刻も早くこの場を去りたいと思っていたのだ。
「……ごめんなさい、お心遣いは有難いんですけど、私……」
「そんなに怖がらないでよ。さっきのはあくまでも演技。詩歌ちゃんに世間の厳しさを分かって欲しかっただけだよ。だから、俺を信じて?」
詩歌が自分に恐怖を感じている事が分かっていた郁斗は彼女の頭に手を置くと、優しく撫でながら不安を和らげようとする。
それには一瞬驚き身体を強ばらせた詩歌だったけれど、彼の優しさが伝わってきたのか徐々に力は抜けていく。
(……私、この人を……信じても、いいのかな?)
未だ本当の郁斗が良く分からない詩歌だけど、行く宛てもない、仕事も住む場所も見つかるか分からない今の自分の立場を考えると、ここは彼を信じて世話になる方が良いと思い直し、
「あの……迷惑をかける事も沢山あると思いますが……よろしくお願いします」
郁斗の元で世話になる事を正式に決めた詩歌は深々と頭を下げてお願いした。
こうしてこの日、詩歌はまだ見ぬ危険な世界に足を踏み入れたのだった――。