優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「……別に、駄目って訳じゃないけど……やっぱり面白くないんだよね、詩歌ちゃんが男に囲まれてチヤホヤされてるの。何だか凄く楽しそうだしさ」
「お仕事ですから、楽しく振る舞いますよ?」
「分かってても、納得出来ない事もあるの!」
「きゃっ!?」

 不貞腐れた郁斗は詩歌を後ろから抱き締め、自身の腕ですっぽりと覆う。

「――本音を言えば、嫌だ。すぐにでも辞めて欲しい」
「――ッ」

 そして耳元で囁くように低い声で本音を口にする郁斗に、擽ったさと嫉妬して拗ねている彼が可愛くて、思わずキュンと詩歌の胸の奥が高鳴った。

「俺も恭輔さんを見習って、ちょっと強引だけど、正攻法で詩歌ちゃんを辞めさせようかな?」
「――!?」

 郁斗のその言葉の意味を、何となく理解した詩歌の頬は一気に紅潮し、身体まで熱を帯びていく。

「ん? その気になっちゃった? 身体、熱くなってきた」
「い、意地悪……ッ」
「意地悪なんかじゃないよ? 思った事を言ったまで」

 郁斗は詩歌の反応を楽しむように耳朶を甘噛みすると、首筋、鎖骨へと唇を這わせ、赤い印を付けていく。

「っん、郁斗、さん……ダメ、……首は……目立っちゃう、から……っ」
「んー? 何? 聞こえないなぁ?」

 駄目と言われると更にやりたくなってしまうのが人間の性というもので、郁斗は先程付けた場所とは別のところに印を付ける。

 それからうなじ、背中と、詩歌が弱い部分を徹底的に攻めていき、昂った想いを止められなくなってしまった二人はベッドへと場所を移すと、朝まで愛を確かめ合うのだった。
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