優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「……郁斗さん、どうかしましたか?」

 いつまでも黙ったまま夜景を見つめる郁斗が気になった詩歌は少し遠慮がちに問い掛ける。

「――詩歌ちゃん」
「は、はい?」
「俺、もう少し経ってから言おうかと思ってたけど、今日あの二人の幸せそうな顔みてたらさ……凄く羨ましくなっちゃったんだよね」
「…………羨ましい?」
「そ。やっぱり、結婚ていいものなのかなって、思ったんだ」
「!」

 詩歌も同じ事を思っていただけに、郁斗も同じ考えだった事が嬉しくもあり、驚きでもあった。

 そんな彼女を前に、郁斗は胸ポケットから何かを取り出した。

 そして、

「――詩歌、俺とこの先もずっと人生を共にして欲しい。俺、今よりももっと強くなって、詩歌の事も、いずれ出来る予定の子供の事も絶対守るから。だから、俺に付いてきて欲しい」

 真っ直ぐ見つめ、取り出した小箱を差し出しながら、郁斗は詩歌にプロポーズをした。

「郁斗……さん……これ……」

 驚き過ぎて、震える手で小箱を受け取った詩歌はゆっくりとリボンを解き、箱を開ける。

 中に入っていたのは、真ん中に光り輝くダイヤモンドがあり、そのサイドには小さなピンクダイヤモンドがセッティングされた、シルバーの指輪だった。
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