優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「樹奈さん」
「んー? 何?」
「私、ずっと聞いてみたい事があったんですけど」
「何?」
「その、恭輔さんとの、馴れ初めなんですけど……」
「えー? あ、そういえば話してなかったよね。恭輔さんも私との交際が周りに知れた時は散々聞かれたって言ってたけど、あの人話したがらないのよね。私にも口止めしてきたし」
「そうなんです。郁斗さんもそこまで詳しくは聞いてないって教えてはくれないし、恭輔さんが話したがらないところを見ると、あまり触れてはいけないのかなと思って、結局樹奈さんにも聞けずじまいで……」
「ふふ、別に隠してる訳じゃないよ。私は話してもいいと思ってるもん。それじゃあ、詩歌ちゃんには特別に話そうかな?」
「いいんですか?」
「うん。特別ね」
「ありがとうございます!」

 こうして、樹奈は詩歌に恭輔と交際に至った経緯を話し始めた。



 樹奈と恭輔の出逢いは苑流のリーダーの鹿嶋と対峙した『UTOPIA』というBARの中。

 囚われの身だった樹奈は郁斗と共に現れた恭輔は正義の味方に思えていた。

 鹿嶋にナイフを突き付けられ、一時は解放されたものの油断した瞬間背後からナイフが振りかざされた時、樹奈はここで死ぬんだと思っていた。

 けれど、「樹奈、こっちだ!」という声と共に腕を引かれて恭輔に抱き留められた時、まだまだ不利な状況には変わり無かったものの、まだ生きれるという喜びと、身を呈して助けてくれた初対面の恭輔に一瞬にして心を奪われたのだ。


 そして、この件がきっかけとなって、樹奈の恭輔への想いは徐々に膨らんでいった。
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