優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 退院してから数日が経ち、自宅に戻った樹奈はベッドの上で恭輔の名刺と睨めっこ状態。

「……連絡して来いって言ってたけど……本当にいいのかな……」

 いざ連絡しようとするも、極道の若頭ともあろう人相手に電話をかけるとなるとどうにも気が引ける。

「……それに、いつ頃掛けたらいいんだろ……今でもいいのかな?」

 昼間は忙しいかもしれないから夜に掛けようか迷っていたものの、気付けば日付が変わる時刻になってしまう。

「やっぱり、こんな時間じゃ迷惑だよね。明日にしよう……」

 そう思い直して電話をかけるのを止めようとしたのに、誤って発信ボタンを押して電話を掛けてしまう。

「あ、ヤバっ! 掛けちゃった……」

 こうなると今切ればワン切りになって印象も悪い。

 仕方なく何度かコール音を耳にしていると、数回程で相手が電話に出た。

「誰だ?」

 恭輔は自らの連絡先を教えただけだったので樹奈の番号を知らず、彼からすれば知らない番号からの電話だった。

 しかも、こんな時間となれば不信感も抱くだろう。

 電話口の声のトーンが些か不機嫌気味に聞こえた樹奈は萎縮するも、

「あ、あの……夜分遅くにすみません……樹奈ですけど……」

 名乗らない訳にもいかないので恐る恐る名を名乗ると、

「ああ、お前か。どうした?」

 相手が確認出来た事で恭輔の警戒心が解かれたのか、声のトーンが一気に優しくなるのを樹奈はひしひしと感じていた。
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