優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 駐車場から公園へと続く一本道にはところどころ外灯があって歩きやすく、多少の明るさに安心感もある。

 だけど、まさかこんなところに来るとは思わなかった樹奈は少しヒールのあるパンプスを履いていた事もあって、先を行く恭輔に置いていかれないようスピードを上げようとした瞬間、

「きゃっ!」

 何かに躓いたのか、よろけそうになって思わず声を上げた。

「どうした?」

 普段女と歩く事がない恭輔は普段通りの歩幅で歩みを進めていたので、樹奈が声を上げた事でようやく彼女と自分の間に距離が出来ていた事を知り、すぐに戻って行く。

「す、すみません……ちょっと、何かに躓いたみたいで……」
「いや、俺の方こそ済まない。てっきり俺のすぐ後ろを歩いていると思っていた」
「いえ、私が遅かったんです、すみません。もう大丈夫ですから」

 体勢を立て直した樹奈は恭輔に『大丈夫』だと伝えて再び歩こうとするも、そんな彼女の前に恭輔は左手を差し出した。

「…………?」

 突然差し出された手に樹奈が戸惑っていると、

「女と歩く事なんてねぇから気を回せなくて悪かった。その靴じゃ歩きにくいだろ? また何かに躓いても危険だから、繋いどけ」

 気遣いが出来ていなかった事を詫びながら、手を繋ぐよう口にした。
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