優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「……ッん、」

 頬や耳を指で撫でられながら啄むような口付けが与えらた樹奈の身体からは力が抜けていく。

 指が動く度、ピクリと肩を震わせながら嬌声を漏らす。

 そんな彼女の反応に更に欲情した恭輔は口付けを止めると今度は舌を唇に這わせ、樹奈のふっくらとした唇を貪るように舐めていく。

「んんッ、」

 樹奈はそのまま唇を開かされて口内へ舌が入れられるのかと思っていたのだけど、恭輔の舌は唇から顎へと下がり、そのまま首筋の方へ移っていく。

「ッぁ、ん……っや、」

 首筋に舌が這う感覚を擽ったく感じたらしい樹奈は、身を捩らせながら小さく吐息混じりの声を上げる。

 そして、着ているブラウスに恭輔の手が掛かったタイミングで彼は舌を這わせるのを止めて樹奈を見ると、

「嫌なら止める。けど、今ここで拒まないなら、さっきの俺の言葉を肯定したと受け取って、俺の女だという印を刻んでやる。身体の中にも外にもな」

 口角を上げ、不敵な笑みを浮かべながらそう口にした。

 そんな彼を前にした樹奈の心は既に恭輔への想いで溢れ、身体は彼を求めていた。

「……嫌、じゃないです……。私も、恭輔さんの事を、好きに……なっていたので……私を、貴方で沢山……満たして欲しい……」

 自分の気持ちに素直になって恭輔への想いを紡いだ樹奈は彼へと手を伸ばして抱きつくと、今度は自ら唇を重ねてキスをした。

 それが、合図だった。

 二人は着ていた服を脱ぎ捨て、互いの温もりを肌で感じ合いながら、ただただ、愛を囁き合う。

 時に優しく、時に強引に触れ合い、恭輔が樹奈の白い肌に赤い印をいくつも付けていくと、身体はみるみる熱を帯び、汗を滲ませながら、二人はなりふり構わずに乱れた姿を晒していった。

 そして――互いの全てが昂り、樹奈のナカに恭輔の全てが注がれた瞬間二人共に絶頂を迎え、身体も心も満たされた樹奈は、その幸せに涙を流していた。

「身体、辛いのか?」

 樹奈の涙を見た恭輔は少し無理をさせたかと不安そうな表情を浮かべるも、彼女はそれを否定するように首を横に振って、

「違うんです……幸せ過ぎて、自然と涙が、溢れたんです……ごめんなさい……」

 身体が辛いとか、嫌だったから泣いている訳じゃない事を告げた。

「そうか。なら安心した。こんな事で幸せを感じられるなら、これからいくらでもしてやる。幸せは壊れたりしない。お前という大切な存在が出来た今、俺は無敵だ。何があっても必ずお前を守るし、必ず幸せにしてやるから、心配するな」
「……恭輔さん……っ」

 いつもどこか孤独だった樹奈にようやく出来た安心出来る存在。

 恭輔の腕に抱かれた彼女は静かに涙を流しながらこの幸せが一分一秒でも長く続く事を、ただ祈っていた。
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