優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 しかし、そんな事とは知らない彼女たちは郁斗に選んでもらおうと自分の魅力を全面に押し出し、常にアピールをしているのだ。

(あー、やっぱキャバ嬢相手は疲れるなぁ。結局井筒は見つからねぇから明日は俺が探しに回らなきゃならねぇし……本当、今日はツイてねぇなぁ)

 店を回り終えて電話で恭輔に報告をした郁斗は直帰して良いと言われマンションへと帰る道すがら、車を走らせながらキャバ嬢たちからの“自分を選んでアピール”攻めにあった事を思い出して、思わず溜め息を吐く。

 それに加えて美澄たちが逃がしてしまった井筒という、市来組が管理している消費者金融会社から多額の借金をした挙句、返済を滞らせて行方を眩ませた男の捜索しなくてはならない事にウンザリしていた。

(美澄と小竹の野郎、会ったら一発ぶん殴ってやらねぇと気が済まねぇな)

 マンションに着くも苛立ちが収まらない郁斗はエレベーターに乗り込み鏡に映る自分の姿を目にする。

(部屋にはあの世間知らずのお嬢様が居るんだった。こんな表情(かお)してたらまた怖がらせちまうからな……)

 両手で頬を軽く叩いて気持ちを切り替え、何とか怒りを鎮めた郁斗はエレベーターを降りて自身の部屋のドアを開けた。
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