優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「ご、ごめんなさい! こんなところで寝てしまって!」
「いや、全然大丈夫だよ? っていうか今はもう詩歌ちゃんの家でもあるんだから、どこで寝ても問題ないよ?」
「そんな……私はあくまでも住まわせてもらう身ですから……」
「だから、そんな事気にしないで良いって。それよりも、ずっと寝てたんでしょ? 流石にお腹空いてるんじゃない?」
「いえ、そんな事――」

『そんな事無いです』と続けようとした刹那、詩歌のお腹は、ぐぅぅーっという盛大な音を立てたせいで、静かな室内に鳴り響く。

「……す、すみません……」

 それが恥ずかしかったのか、詩歌は謝りながら顔を真っ赤に染めて俯いてしまう。

「あはは、お腹は正直だね? 別に謝る事じゃないよ。俺もお腹空いたし、何か頼もっか」

 そんな詩歌に郁斗は気にしていない素振りを見せて、自分もお腹が空いているからとメニュー表を見ながら料理を頼もうと提案した。

「……は、はい……」
「何が食べたい?」
「えっと……オススメとか、ありますか?」
「うーん、そうだなぁ、このホテルのお弁当は結構美味しいよ?」
「そうなんですね……」

 郁斗に言われて、五つ星ホテルのメニュー表を見ると、結構な値段に思わず二度見する。

「えっと……私は、やっぱりこっちのお弁当にしようかな……」

 流石にそんな高級な物を頼めるはずがない詩歌は、チェーン店の良心的な値段のお弁当にしようとするけれど、

「詩歌ちゃん、値段とか気にしなくて良いって言ったでしょ? 俺はこのお弁当頼むから詩歌ちゃんも同じのでいいよね?」

 郁斗には詩歌の考えている事が分かってしまい、五つ星ホテルの高級なお弁当を頼む事になった。
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