優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 暫くして、コンシェルジュが部屋までお弁当を届けてくれると、二人はテーブルにお弁当を広げて食べ始めた。

 和牛のすき焼き重に、ローストビーフ、海老と野菜の天ぷらに煮物という様々な料理が入った二段弁当は相当ボリュームがある。

「美味しい?」
「はい、凄く美味しいです」
「でしょ? まあ、多少値は張るけど、やっぱり食べるなら美味しい物を食べないとねぇ」

 郁斗の言う事は最もかもしれないけれど、毎日こんな高価な物を食べていては金銭的に困るのではと詩歌は思う。

「……あの、郁斗さんは毎日こういった物を食べているんでしょうか?」
「ん? いや、毎日ではないよ? 流石にこう高いのばっかりはね。時にはチェーン店の物も食べるし」
「あ、いえ、その……それもそうなんですけど、自炊はなさらないんでしょうか?」

 詩歌が一番気になったのは、毎日の食事は全てデリバリーや外食なのかという事なのだが、

「しないよ? そもそも俺、料理出来ないからね。頼むしかないよ」

 料理が出来ないと言う郁斗はこれが日常だと言った。
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