優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
(まあ、あそこなら俺も合間に様子見れるし、太陽に任せておけば、問題はねぇかな)

 本人のやる気がある以上、何を言っても納得しないであろうと考えた郁斗は、

「……分かった。それじゃあ店長に話をつけてあげるから、暫く働いてみるといいよ」

 少しの間、詩歌を『PURE PLACE』で働かせてみる事に決めた。

「ありがとうございます!」

 働き口が見つかって嬉しいのか、無邪気に喜ぶ詩歌。

(……分かってんのかねぇ? キャバクラがどんなところか……)

 しかし、あまりに危機感の欠片が無い詩歌を前にした郁斗の心は、まるで(もや)がかかったようにどこか釈然としない。

「っていうか、詩歌ちゃんはまだお酒は飲めない歳だよね?」
「あ、はい。けど、少しくらいなら大丈夫かなと」
「いや、駄目でしょ。うちの店、そういうの結構厳しいからきちんと年齢伝えて、強要されてもノンアルとかで対応しなきゃいけないよ?」
「そ、そうなんですね。分かりました」

『PURE PLACE』に限らず、キャバクラでは年齢を偽る事自体、店側が罪に問われるリスクがあるので、その辺はしっかり伝えておこうと念を押す。

 ただ、本人が飲まないようにしていても、客が無理矢理強要したり、すり替えられて飲まされたりという事が必ずしも起こらない訳じゃない。

 警戒心の薄い彼女相手ならやれない事もないだろうから、郁斗はそこを心配しているのだ。

「それじゃあ、早速明日紹介するからね」
「はい、よろしくお願いします!」

 色々と問題はあったものの、詩歌の新たな生活は良い感じで幕を開けて本人もひと安心。

 そうと決まれば明日の為に早く床につきたいところだけど、昼間から夜まで眠ってしまった詩歌は全く眠く無い。
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