優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「そう言えば、詩歌ちゃんの寝る場所だけど……部屋は空いてるんだけど、あいにく布団が無いんだ。後で用意するにしても、今日はもう無理。ソファーでっていうのは疲れも取れないでしょ? ここはやっぱりベッドで寝る方がいいと思う。だから……俺と一緒のベッドで寝ようね」
「……え? い、一緒の、ベッド……で?」

 布団が無いのは仕方が無い。ソファーでは疲れが取れないのも頷ける。

 けれど、だからと言って何の躊躇いもなく『一緒のベッドで寝よう』だなんて言われるとは思いもしなかった詩歌は驚きを隠せない。

「どうかした?」
「えっと……その……あの、私、ソファーで大丈夫です! さっきも寝てましたし、ここのソファー大きくてベッドみたいだから、全然疲れませんし!」

 何とかして一緒のベッドで寝る事を回避しようと断ってみるも、

「……もしかして、詩歌ちゃんは俺と一緒が嫌なのかな? そうだよね、俺なんかと一緒なんて嫌だよね」

 急に切なげな表情を浮かべた郁斗は落ち込むような素振りを見せて詩歌の反応を見続けている。

「あの、いえ……その、郁斗さんが嫌とか、そういう事じゃなくて……その……」

 どう断れば分かってもらえるのか、必死に言葉を選びながら伝えようとしている詩歌を前にした郁斗は、

「詩歌ちゃん、そんなんじゃ全然駄目だよ。相手に隙を見せてばかりじゃ相手の思う壷。そんな可愛い顔して焦ってばかりだなんて、そんなの――ただ、男を煽ってるだけだよ?」

 焦る詩歌に再び近づいていくとそのまま彼女の身体をソファーに押し倒して上から見下ろした。
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