優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「……いくと、さん……」
「何?」
「あの、これは……」
「ん?」
「……も、しかして、酔って、ます?」

 先程練習も兼ねていくつかお酒の作り方を教わった詩歌。作ったお酒は全て郁斗一人が飲んだ為、もしかしたら酔っているからこんな風にからかい出したのかもしれないと思い尋ねるも、

「酔ってなんかいないよ? 俺、酒は強い方でね、基本酔わないんだよ」

 郁斗は全く酔っていないようで笑顔を浮かべながら詩歌を見下ろし続けている。

 見つめられて恥ずかしくなった詩歌が顔を背けようとするも、

「逸らさないで、その可愛い顔、もっと良く見せてよ」

 郁斗の骨ばった手が彼女の頬に触れて、邪魔をする。

 触れらた頬が熱くなり、詩歌の体温がどんどん上昇していく。

 見つめられて恥ずかしいのに逸らす事すら出来ず、触れている郁斗の指が頬から唇へ移動して行くのが(くすぐ)ったかった詩歌は、

「……っ!」

 思わず声を上げそうになるのを我慢する。

「擽ったかった? ごめんね。でも、声は我慢しなくていいんだよ? そんな風に我慢されると、もーっと虐めたくなっちゃうなぁ」

 けれど、そんな彼女の反応を愉しむように悪戯な笑みを浮かべた郁斗は詩歌の唇を親指の先で撫でた。
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