優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「よし、それじゃあ早速、奴を捕まえに行く」

 話を終えた郁斗は二人に言うも、探しに行くも何も宛はあるのかと不思議に思う。

 美澄と小竹は昨日、血眼になって井筒を探し続けていたのだが、彼の足取りは全く掴めなかった。

 しかし、今の郁斗の口振りだとまるで井筒の居場所が分かっているかのようだ。

「あの、郁斗さん」
「何だよ?」
「その、井筒の居場所、見当がついてるんすか?」
「……お前らさ、昨日本当に隅から隅まで探したのか?」
「勿論っす! なあ、小竹?」
「はい!」
「……はぁ、だからまだまだおめェらは甘いんだよ。奴はな、この近辺に居る」
『なっ!?』

 郁斗の言葉に驚きを隠せない二人は思わず顔を見合わせる。

 郁斗が嘘をつくはずがない事くらい想像出来るものの、二人は腑に落ちない。何故ならこの辺りは井筒が行方を眩ませた直後に探し回った場所だから。

 それなのに、奴がこの辺りに潜んでいるという事が信じられないのだ。

「それじゃあ、井筒は初めからずっと、この辺りに潜んでるんすか?」
「ああそうだ」
「一体どこに……」
「郁斗さん、どうして分かったんすか?」

 美澄と小竹は、郁斗が何故井筒の居場所を掴めたのか、そして今もそのまま野放しにしているのか、訳が分からないと言った状態で尋ねると、

「……これ、見てみろ」

 郁斗は自身のスマホを取り出すと、昨夜恭輔から送られて来たメッセージに送付されていた動画を二人に見せる。

 するとそこには、暗闇の中、何処かの建物内で動き回る井筒の姿が映っていたのだった。
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