優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「すみませんでした! もう逃げたりしませんから、どうか命だけは助けてください!!」

 無事井筒を捕らえる事に成功した美澄と小竹は郁斗と共に恭輔の元へやって来て引き渡すと、早速尋問のような行為が始まった。

 一度ならばまだ多少痛めつける程度で終わっていたのだけど、今回は二度目とあって流石の恭輔も黙ってはいなかった。

「井筒さんよ、そう思うなら何で逃げる? テメェは前にもそう言ったんだよな? それでも懲りずに金借りて、また逃げ出しやがった。そんな奴の言葉を信じる人間がいるか?」
「すみません、すみません……」

 井筒は既にここへ連れて来られた段階で美澄や小竹に何度となく殴られ、顔は腫れ上がっている。

 そんな彼の髪を掴み上げた恭輔は、

「まあ、俺ら市来組は人を殺したりはしねぇ。ただなぁ、こっちも金貸しは商売なんでね、返して貰わねぇと困るんだよ」
「ひいぃぃ……」
「つーわけで、テメェには逃げられねぇよう別の組織に引き渡す事になった。せいぜいそこで命乞いでも何でもするんだな」
「た、助けて……」
「慎! こいつを間島(ましま)組に運んで来い」
「了解しました」
「い、いやだ! 頼む! 必ず金は返すから……!」
「うるせぇな、黙ってろよ!」
「うぐっ……」

 部屋から連れ出そうとすると暴れて騒ぎ出した井筒に苛立ちを覚えた慎は彼のみぞおちに拳を一発食らわすと苦しそうな声を上げて大人しくなったので、そのまま身体を担ぎあげて外に停めてある車へと運んで行った。
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