優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「――そうか、そういう事情がな」
「ええ。とりあえず、今のところまだ花房家に動きはないようです」
「もう相手の動向を確認してるのか?」
「関西の方に拠点を置いてる昔馴染みのダチに依頼して早速調べて貰ってます」
「流石だな。それで、これからどうするつもりなんだ?」
「そうっすねぇ、まだ決めてないですけど、暫くは彼女のやりたいようにやらせてやろうとは思ってます」
「ふむ……、まあそれは構わないが、郁斗にしてはやけに肩入れするじゃねぇか」
「別に、理由なんてないっすよ。なんつーか、行きがかり上?」
「俺には、それだけには思えねぇが、まあお前がそうだと言うならそういう事にしておくか」
「なんすか、その含みのある言い方は」
「別に、何もねぇさ。それにしても……花房……か」
「どうかしたんすか?」
「いや、花房 慎之助(しんのすけ)……その男、どこかで見覚えがあるんだよな」

 恭輔は先程詩歌の説明をする際に彼女の父親や婚約者の男の画像を郁斗から見せられた時、どこかで見覚えがあると思うも、なかなか思い出せずにいた。

「そうなんすか? まあ、また新たな情報入ったら共有しますよ」
「ああ、そうしてくれ」
「それじゃあ俺はこれから『PURE PLACE』に戻るんで」
「彼女の監視か?」
「まあ、そんなとこっすね」
「そうか。しっかり仕事して来いよ」

 こうして、恭輔との話を終えた郁斗は詩歌の待つ『PURE PLACE』へと戻る事になって車を走らせる。

 その途中、太陽から写真画像が送られてきたので信号待ちに確認すると、

「なっ…………」

 その画像にはヘアメイクを終えてドレスアップをした詩歌の姿が映されていて、より一層綺麗になった彼女の姿に郁斗は思わず驚き言葉を失った。
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