優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「そうそう、紹介しておくよ。今日から働く事になった詩歌ちゃん。源氏名は『白雪』ね」

 郁斗に熱烈なアピールをしているところに太陽が話し掛け、詩歌の事を紹介する。

「ふーん、新人ちゃんかぁ…………まあまあ綺麗ね。樹奈には劣るけど」

 樹奈は詩歌の事を品定めするよう頭から爪先までくまなくチェックをすると、表情と言葉がイマイチ噛み合っていないものの詩歌を褒めた。

「詩歌ちゃん、こちら樹奈。この店の稼ぎ頭の一人だよ。ちなみに、樹奈はここでも樹奈って名乗ってる」
「初めまして、樹奈さん。これからよろしくお願いします」
「うん、こちらこそよろしく~。っていうか、もしかして郁斗さんがこの子スカウトして来たの?」
「うーん、まあ、スカウトとは少し違うかな? 俺の顔見知りの子なんだ。樹奈は面倒見が良いから、頼りにしてるよ」
「あ、そうなんだ? それなら任せて! 樹奈が詩歌ちゃんの面倒見るから! だから、今度樹奈を指名してくれる? 勿論、アフター付きで♡」

 根は良い人のようで、郁斗に頼まれた樹奈は自分に任せるよに言うと、その代わりに今度自分を指名して欲しいと頼み込む。どうやら郁斗の事が好きらしい。

「はは、ちゃっかりしてるねぇ樹奈は。いいよ、今度指名するよ。アフター込みで」
「わぁーい! 嬉しい~! 楽しみにしてるね」
「うん」

 郁斗からの約束を取り付けた樹奈は満足気な表情を浮かべながら手を振ると、荷物を置きにロッカー兼休憩室へと向かって行った。

 その様子を黙って見つめていた詩歌の心はチクチクと針が刺さるような痛みを感じ、密かに落ち込んでいた。
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