優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「白雪ちゃんはね、今日が初めてのお仕事なの。よろしくね。あ、でもぉ、副島さんはよそ見しちゃ駄目だよ? レイラ、嫉妬しちゃうから」
「あはは、大丈夫。僕はレイラにしか興味ないよ。白雪ちゃんはコイツの相手をお願いね」

 希咲――もといレイラは副島の腕に自身の腕を絡めてくっつくと、二人は堂々とイチャつき始めた。

 そんな中、副島に言われた詩歌は連れの相手をすべく、向かい側の椅子に座って話を始める。

「あの、よろしくお願いします」
「ああ」
「何か、飲まれますか?」
「いや、今はいい」
「そうですか……えっと、お名前……伺っても宜しいでしょうか?」
「……桐谷(きりや) 大和(やまと)
「桐谷様ですね」
「……大和でいい」
「えっと、それじゃあ、大和さんで」
「ああ。アンタ、今日が初めてとか言ってたけど、何でこんなところに来たんだよ? 言っちゃ悪いけどアンタ、明らかにこういうとこ向いてなさそう」
「そ、そうですよね。その、ちょっと色々あって、知り合いの方に紹介してもらったんです」
「へえ」

 大和は口数も少なく話が得意そうでも無いので、副島と希咲が盛り上がる横でまるでお通夜のような静けさの中、詩歌は頑張って話を続けていく。

 少しして、酒が入った事と場馴れした事で大和も徐々に会話するようになってくると、それにつられた詩歌は笑顔を浮かべて接客をする。

 終始和やかな感じで詩歌のデビューは幕を開けて、詩歌自身ホッとしていた。
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