優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「おい太陽、あれから詩歌をヘルプには付けたのか?」

 再び仕事の電話で外に出ていた郁斗が戻ってくると、相変わらず暇そうに待機している詩歌を見てすぐに太陽に確認をとる。

「それが……みんなヘルプに付けたがらないんです……」
「はあ?」
「まあ恐らく、先程希咲のヘルプに着いた時に周りの席の客をも魅了した彼女を自分の席に着かせると指名替えをされるかもしれないというリスクを恐れている……のかもしれないですね」
「……はあ。そんな事くらいで指名替えなんてそうそうねぇっつーの。あるとすれば、そいつに魅力が無いだけ。構わねぇで太陽の方からヘルプ付かせろよ」
「……いや、それはちょっと……」

 勿論店長権限で強制的にヘルプに付かせる事も出来なくはないものの、気の強いキャストたちの機嫌を損ねると後が大変になる事を恐れている太陽は郁斗の命令を渋っていた。

「……はあ。もういい。それじゃあ俺が席に着くから、詩歌を俺の席に寄越せ。詩歌にはきちんと接客するよう言って連れて来いよ」
「わ、分かりました」

 このままでは埒が明かないと溜め息を吐いた郁斗は、自身が客として席に着くから詩歌を付けろと言って、空いている席に腰を降ろした。
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