優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 しかし、だからといって心を許すには値せず、彼の言う通り少しでも情報を得ていた方が安心出来るかもしれないと気になっていた事を一つ聞いてみようと口を開いた。

「あの……さっき、どうしてあんな場所で昼寝なんてしていたんですか?」
「……詩歌ちゃん、最初に聞く事それ? もっと他にあるでしょ。ま、いいけど」

 詩歌の質問が予想外だったらしい郁斗は目を見開き、失笑する。

「今日は夕方からあの近くで人と会う約束があったし、早く起きたから暇潰しも兼ねて駅前のパチ屋行ってたんだけど……調子悪くて暇も時間も潰せずあっという間に十万スったから、気分悪いしする事もなくて不貞寝してたんだよ。あそこ、滅多に人来なくて寝るには最適な空間なんだよねぇ」
「そ、それは……なんて言うか、凄い……ですね。十万円を、あっという間に……」
「まぁ、ギャンブルだから仕方ないけどね、儲かる時もあるから夢は見れるよ」
「は、はあ……」

 当然、詩歌はギャンブルなどとは無縁な人生を生きているので郁斗の話にはイマイチ共感出来ず、若干戸惑っているように見える。

 そんな話をしながら二十分程が経った頃、車は街中から少し離れた高層ビルやマンションが建ち並ぶエリアへ差し掛かると、その中でも一際高さのある四十階建ての高層マンション前にたどり着き、郁斗はそのマンションの駐車場に車を停めると詩歌を連れてエレベーターに乗り、最上階のボタンを押した。
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