優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
STORY4
 詩歌が郁斗の元で生活するようになってから約ひと月が経った頃、花房家に動きがあった。

「……え? それは、本当なんでしょうか?」

 店での勤務を終えて帰った詩歌は所用で彼女よりも少し遅れて帰宅した郁斗の言葉を耳にするなり驚き、思わず聞き返した。

「うん。信頼出来る筋からの情報なんだよ。詩歌ちゃんにとって父親にあたる花房 慎之介と婚約者にあたる四条(しじょう) 康隆(やすたか)の二人は、裏組織と繋がりがある」
「……裏組織……その、郁斗さんたちヤクザと同じような?」
「まあ、一括りにすれば似たようなものだけど、二人と繋がりがあるのは半グレ集団。その中でも関西で結構悪さしてる組織と深い繋がりがある集団みたいでさ、ちょっと厄介そうな感じなんだよねぇ」

 そう言いながら煙草を取り出して口に咥えると、火を点けた郁斗は何かを考えるような素振りをしながらふぅーっと息を吐く。

「それから、奴らは組織に君の捜索を頼んでるね。今はまだ関西周辺を中心に捜索してるみたいで関東の方まで来てないようだけど手掛かり無しとなれば、そろそろこっちの方にも手を回すかもね」
「……やっぱり、義父(ちち)たちは私を捜しているんですね」

 家出からひと月、郁斗が色々な手を使って警察内部に詳しい人物から詩歌の捜索願いが出ていないかを確認してもらったところ、出ていない事が判明。

 それを知った詩歌は安堵していたようだけど、監視までして囲っていた娘が居なくなったのに届けを出さない事が、郁斗は不思議で仕方なかった。
< 67 / 192 >

この作品をシェア

pagetop