優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 同時に花房と四条には警察と関われない事情があると考え、各方面の協力を得て情報収集にあたり、その後も警戒を続けていた。

 そして郁斗の読み通り、二人は裏組織との繋がりがある事が原因で警察とはあまり関われない事を知り、詩歌の捜索は組織の人間が行っていると分かったのだ。

「とにかく、今後はこれまで以上に一人で行動する事は控えないといけない。分かるよね?」
「はい」
「店での勤務に関しては、まあそこまで心配する事はないよ。店の中も外も市来組が常に目を光らせてるから。ただ念の為、暫くは常連のみの接客限定にしよう。どこから嗅ぎつけてくるか分からないからね」
「分かりました」

 ここ最近は接客にも慣れて新たな暮らしを楽しむ余裕を見せていた詩歌だけど、義父たちが捜している事を知った今、いつ居場所がバレてしまうのかと考えるとだんだん怖くなり、自然と元気が無くなっていく。

 そんな彼女を安心させようと郁斗は、

「大丈夫。詩歌ちゃんの事は俺が必ず守るから、心配いらないよ」

 煙草の吸殻を灰皿に押し付けると、ソファーに座って俯いてしまった詩歌に優しく言葉を掛けた。
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