優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 高級外車を愛車に持ち、ギャンブルに十万円を惜しむこと無く投資し、高層マンションの最上階に住んでいる郁斗。

 彼は一体何者なのだろうと詩歌は思う。

「さ、遠慮しないで入って」
「お、お邪魔します」

 エレベーターを降り、一番奥の端の部屋の前に着くと郁斗は鍵を開けて詩歌を部屋へ招き入れた。

 室内に入ると一際大きな窓が目に入り、そこからの景色は実に圧巻だった。

 マンションの周りにはいくつかビルやマンションが建っているものの、このマンションはこの辺りでは一番の高層マンションゆえ、その最上階ともなると周りに遮るものがないので、日中は晴れていると遠くの方に富士山が見えたり、夕焼けや夜景などのありとあらゆる良い景色が存分に堪能出来る。

「その辺、適当に座ってて」
「は、はい……失礼します」

 コートを脱いで畳んだ詩歌はバッグと共に足元へ置くと、まるでベッドなのかと思う程大きい何人掛けだか分からないL字型のソファーに腰を下ろして辺りをキョロキョロ見回した。

(凄いお家……。こんな広い家に一人で暮らしてるのかな?)

 白と黒を基調としたモノトーンな空間は広いのに最低限の家具や家電しかなく生活感が感じられないこの部屋はまるでモデルルームのような印象を受ける。
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