優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「金髪の方が美澄。黒髪の方が小竹だ」
「初めまして、美澄 (とら)です!」
「初めまして、小竹 侑士(ゆうし)です」

 二人は久しぶりのキャバクラにテンションが上がってはいるものの、警護対象となる詩歌ときちんと姿勢を正し、名を名乗った。

「美澄、小竹。この子は詩歌ちゃん。店では『白雪』って名乗ってるから、くれぐれも間違えないようにね。まあ、よろしく頼むよ」
「初めまして、美澄さん、小竹さん。花房 詩歌です。よろしくお願いします」

 いつも通りきちっと姿勢を正してお辞儀をする彼女の姿に見惚れる二人。

 今日は周りの目を気にせず話がしたいという郁斗の申し出もありVIPルームでの接客という事で、詩歌はいくらか気が楽そうだった。

「それじゃあ早速本題に入るよ。ここに来るまでに詩歌ちゃんの境遇を多少話したとは思うけど、彼女は今、半グレ集団【苑流(えんりゅう)】に行方を捜索されてる」
「苑流?」
「苑流は近頃【黛組(まゆずみぐみ)】とつるんでるグループだよ」
「黛組って、関西連合【多々良会(たたらかい)】の傘下組織の中でも際どい事して多々良会ですら手を焼いてるっていうあの黛組ですか?」
「そう。正直、非常に厄介な連中だ」
「マジっすか? かなりやべー案件じゃねぇっすか……」
「それは分かってる。だから俺は信頼出来るお前ら二人に詩歌ちゃんの警護を頼みたいんだよ」

 郁斗の話を聞いて美澄と小竹ですら険しい表情を浮かべているのを目の当たりにした詩歌は、自分を捜している組織がとんでもない相手なのだと再認識して思わず身震いした。
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