優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 そして早速明日から交互に詩歌の護衛に就く事が決まり、この日は解散となった。

 郁斗はお酒を飲まなかったので彼の運転で帰る事になり、詩歌が着替えを終えて事務所へ向かうと、樹奈が郁斗に言い寄っている現場に遭遇した。

「ねぇ郁斗さん、いつ樹奈を指名してくれるの? 樹奈、待ちくたびれちゃったよぉ」
「んー? そうだねぇ、今度……かな?」
「もう、そう言って全然声掛けてくれないじゃん。明日は?」
「……仕事終わってからになるから一時間くらいになっちゃうけど、それでもいいならいいよ」
「アフターもいい?」
「約束だからね」
「やったぁ~♡ それじゃあ、明日ね! 待ってるから! ドタキャンしちゃ嫌だよ?」
「ああ、分かってるよ」

 約束を取り付けた樹奈は満足したようで、意気揚々と事務所を出て行った。

 そんな彼女に気付かれないよう身を隠していた詩歌は遠慮がちに中へ入る。

「詩歌ちゃん。ん? どうかした? 何か元気が無いけど……もしかして体調悪いとか?」
「い、いえ。何でもないです。すみません、お待たせして」
「いいって。それじゃ、帰ろうか」
「はい」

 郁斗は明日、樹奈に会う為に『PURE PLACE』へやって来る。その事が何だか凄く嫌で、複雑な気持ちになった詩歌はモヤモヤを抱えたまま帰路に着いた。
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