優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 翌日、郁斗は朝から用があって出掛けるという事で、今日の護衛担当でもある美澄がマンションへとやって来た。

「美澄、それじゃあ詩歌ちゃんの事よろしく。帰りまできちんと頼むよ」
「分かりました!」
「それじゃあ、詩歌ちゃん。またお店でね」
「はい、行ってらっしゃい……郁斗さん」

 美澄と共に郁斗を見送った詩歌の表情はどこか元気が無い様子で、それに気付いた美澄が遠慮がちに声を掛けた。

「詩歌さん、どうかしたんすか?」
「え?」
「何だか元気が無いみたいですけど、心配事でもあるんすか?」
「……い、いえ、そんな事ないです」
「そうですか? まあ、何も無いならいいんすけど。俺でよければ話くらいは聞きますよ!」

 美澄にそう言われた詩歌は少し考えた後、

「あの、それじゃあちょっとお話してもいいですか? 何かお飲み物を用意しますから、ソファーに座ってください」
「あ、いや、お構いなく!」
「いえ、いいんです。コーヒーと紅茶、どちらが良いですか?」
「……それじゃあ、コーヒーで」
「分かりました」

 詩歌の気遣いに甘えてコーヒーをお願いした美澄は言われた通りソファーに腰を下ろした。

「どうぞ」
「すいません、ありがとうございます!」

 コーヒーを淹れ、カップを二つ手にした詩歌は美澄の向かい側に腰を下ろすと、一口飲んでから話を切り出した。
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