優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「あの、話というのは……郁斗さんの事なんです」
「郁斗さんの?」
「……その、郁斗さんって、『PURE PLACE』のキャストさんと、定期的にアフターの約束をしているのでしょうか?」
「え? アフター?」
「はい……その、今日は、樹奈さんを指名して、お店が終わってからも、お会いするようなので……」
「ああ、だから今日は仕事終わりも詩歌さんの事を俺に任せたんすね」

 なんて、詩歌の言葉に一人納得した美澄が頷くも、彼女にとってそんな事はどうでもいいらしく、それには反応を示さない。

「あーえっと、まあ、あそこのキャスト……に限らず、あの界隈では郁斗さん人気なんすよ。ホストやってたの、知ってます?」
「あ、はい。聞きました」
「常にNO.1張ってたらしいんすけど、変わり映えしない毎日がつまらなくて辞めたらしくて、その後はスカウトの仕事をしてたんすよ」
「スカウト?」
「キャバ嬢になりそうな子に声掛けする……って感じの」
「そうなんですか」
「そう。それで郁斗さんが連れて来た子は大抵どこの店でも売り上げ上位のキャバ嬢に育つんで、色々な店から依頼されて仕事が舞い込んでたみたいなんす」
「女の人には、慣れているんですね」
「まあ、ホストだったから当然って言えば当然すけどね」

 自分から郁斗の話を振ったのだけど、聞けば聞く程、詩歌の表情は曇っていく。
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