優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「……私、やっぱり郁斗さんの迷惑になっているような気がするんですけど、美澄さんはどう思いますか?」
「え? いや、迷惑とか郁斗さんは思ってないっすよ! そもそも迷惑に思ってたら家には連れて来ないですし、郁斗さんの家を知ってるのって組の奴でも極わずかしかいないんすよ? それを知ってる詩歌さんは特別なんじゃないかって俺は思うっす」

 『特別』という美澄のその言葉に、これまで詩歌の胸の中で渦巻いていたモヤが一気に晴れていく。

「本当に、そう思いますか?」
「はい」
「……そう、ですか」

 美澄に再度問い掛けた詩歌は彼の返事を聞くと、徐々に笑顔が戻っていく。

 女ってのは、色々と複雑なんだなぁという事を呑気に考えながらコーヒーを飲んだ美澄は、詩歌に元気が戻ったようでひと安心しながら他愛の無い話を続け、出掛けるまでの時間を潰していた。

 一方の郁斗は、

「黛組か、厄介な相手とつるんでるもんだな」
「そうなんですよね。それと、さっき情報屋から連絡があって、とうとう関東の方にも捜索を入れ始めたみたいなんです」
「それじゃあ、見つかるのも時間の問題だな。暫く店には出さねぇ方がいいんじゃねぇのか?」
「そうですね……」
「まぁ、結構な稼ぎ頭になってるようだから太陽は渋るかもしれねぇな」
「確かに。けど、足がつけば店にも影響が出ますからね。明日から暫く休ませますわ」
「ああ、その方がいい」

 恭輔と詩歌絡みの情報共有を行い、黛組が関東へと捜索範囲を広げた事を受けて、暫く詩歌を店には出さない事を決めた。
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