優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 その夜、美澄はボーイとして店内に潜り込んで詩歌の警護を続け、そんな彼に見守られながらいつも通り常連客や新規の客の接客をこなしていた詩歌は久しぶりに大和からの指名を受けた。

「大和さん、お久しぶりです」
「ああ。悪いな、なかなか来れなくて」
「いえ。お仕事お忙しかったんですか?」
「ああ、まあ、色々とな」
「お忙しい中、来てくださって嬉しいです」
「白雪に会いたかったから、無理矢理時間作ったんだ」

 大和はあれから一度だけ一人で来店したものの、それ以降姿を見せてはいなかった。

 初めて接客をして初めて名刺を貰った相手だからか、詩歌は彼がなかなか来てくれない事を密かに心配していたのだ。

 久しぶりとあって二人の会話は弾み、終始楽しい時間を過ごしている中、仕事を終えた郁斗が店にやって来た。

「郁斗さん、お疲れ様です」
「太陽、ちょっと話がある」
「分かりました」

 郁斗は来店するなり太陽に話があると奥へ入って行く。そして、

「白雪さん、ちょっと……」

 郁斗が詩歌を呼んだ事で、ボーイに扮した美澄が声を掛けてくる。

「…………分かりました。大和さん、少しだけ失礼します。すみません」
「ああ、白雪も人気になったみたいだから仕方ねぇよ。待ってる」
「すみません、行ってきます」

 大和に声を掛けた詩歌は申し訳なさそうに席を立ってVIPルームの方へ歩いて行った。
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