優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「それじゃあ、私戻りますね。接客中だったので」
「ああ、そうだよね。桐谷様の接客中だったよね」
「桐谷?」
「詩歌ちゃんの初接客の時のお客様ですよ。副島様の連れの方です」
「ああ、アイツか……」
「それでは、また後程」

 大和の接客をしていると知った郁斗は何故か浮かない表情を浮かべていたのだけど、それに気付かない詩歌は立ち上がるとVIPルームを後にした。

「大和さん、お待たせしました」
「あら、白雪ちゃん、郁斗さんの方はもういいの?」
「あ、樹奈さん……。は、はい。もう用は済みましたので」
「そう。それじゃあ大和さん、失礼しますね」
「ああ…………ありがとう」
「ふふ。どういたしまして」

 詩歌が戻って来た事で樹奈は大和に挨拶をすると再び待機席へと戻っていく。

「あ、グラスが空ですね。何か作りますか?」

 入れ違いで席に着いた詩歌は大和のグラスが空になり掛けている事に気付き、そう声をかけると、

「……白雪、俺なんかより……その郁斗って奴の接客してた方がいいんじゃないのか?」

 冷めた瞳で詩歌を見つめた大和は突如、素っ気なくそう言い放った。
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