優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「――そっか、そんな事が……。けど、仕方ないよ。詳しく説明する訳にはいかないからね。それよりも、樹奈か……太陽、樹奈は帰ったのか?」
「はい、そのようです」
「まあ、今日の事は俺が悪いからな……。勝手に帰った事は大目に見てやってよ」
「はい、分かりました」
「それじゃあ、今日のところは帰るよ。詩歌ちゃん、行こうか」
「はい。それでは太陽さん、暫くの間、お休みをいただきますね」
「ああ。まあ店の事は気にしないで、詩歌ちゃんはくれぐれも、組織に見つからないよう気をつけてね」
「はい、ありがとうございます。失礼します」

 こうして郁斗共に店を後にした詩歌。

 実はこの光景を少し離れた場所から見ていた人物が二人居た。

 それは――

「ね? やっぱり郁斗さんと白雪ちゃん、一緒に出て来たでしょ?」
「…………」
「郁斗さん、白雪ちゃんの事お気に入りなのよ。白雪ちゃんの方も満更ではないと思うよ」
「……やっぱり、そうなのかよ⋯⋯」
「まあ、白雪ちゃんって男慣れしてないから、ちょっと言い寄られたら付いていきそうだけどね。大和さんの事、気になってるような素振り見せておきながらあれは無いと思うわ」
「……やっぱり、キャバクラなんてろくな女いやしねぇ」
「あら、失礼ね。樹奈は違うわよ?」
「……アンタだってなかなかの悪女じゃねーか。こういう世界では指名客じゃねぇ俺みたいな客と外で会うとか、駄目なんじゃねーの?」
「ま、それはそうだけど。だって、大和さんが可哀想だったから黙っていられなくて」
「そーかよ」
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