優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
「私……郁斗さんにスカウトされてキャバに入ったのよね。だから、彼に相手にされないならもう店にいる意味もないかなぁ」
「辞めるのか?」
「うーん、どうだろ。でも、辞めるにしても、このまま黙ってっていうのは樹奈の性に合わないのよねぇ」
「……何を企んでるんだよ?」
「企んでるなんて、酷い言い方。でも、大和さんはこのままでいいの?」
「どういう意味だよ?」
「私は、二人には痛い目に遭って欲しいって思ってる」
「怖ぇ女だな、アンタ」
「そお? 実は私の知り合いにちょーっと怖い人が居るんだよね。その人に相談しようかなって思ってる」
「へえ?」
「大和さん、白雪ちゃんの事はもういいの? 好きなんでしょ?」
「……どうしようもねぇだろ、キャバ嬢なんか好きになっても」
「そんな事ないよ。女なんて、危険な目に遭ったところを助けて貰いでもすれば案外簡単に落ちるものよ」
「……アンタもそうだったっていうのか?」
「そう。借金取りに追われてたところを郁斗さんが助けてくれて、その後スカウトされたの。その時から、好きだった。けど、ああいう男は私みたいなのには(なび)かないみたい」
「…………」
「どうする? 白雪ちゃんの事、諦めたくないなら協力するよ?」
「…………そうだな、頼むよ」
「了解~。それじゃあ知り合いにお願いしてみるから、動きがあり次第連絡するね。バイバイ」

 一体樹奈はどんな事を企んでいるのか、裏でこんな事になっているとは知りもしない詩歌たちは美澄と小竹の二人と合流して共にマンションへ戻ると、今後について改めて話し合いが行われた。
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