優しい彼の裏の顔は、、、。【完】
 そして、彼の好みが詩歌のように容姿が整っていて、穢れを知らない純新無垢なお嬢様だという事も。

 それを踏まえると、そもそも黛が花房に近付いたのも詩歌が狙いだったのではと郁斗は考えていた。

 花房を信用させて裏で色々と手伝わせ、どこかのタイミングで花房や婚約者から詩歌を奪うつもりでいたのだろうから、黛にとって今回の詩歌の家出は願ってもない事だったのではないかと。

「だけど、それじゃあ花房たちは?」
「黛組は詩歌さんを見つけても、花房や四条には黙っておくつもりなんですか?」
「いや……恐らく、花房や四条が売春斡旋の首謀者と密告されるか、組織に消されるかの二択だろうね。まあ俺としては、後者だと思うけど」

 郁斗のその言葉に、一同は絶句した。

「私が黛組の方に捕まれば……義父(ちち)や四条さんは……殺されてしまうかもしれない……という事なんですね……」
「ああ、恐らく……」

 このような話は詩歌にとって全てが衝撃的過ぎて、なかなか頭の中が整理し切れていないようだ。

 そして、自分は本当に無事でいられるのか、不安でたまらなくなっていく。

 そんな詩歌に郁斗は、

「大丈夫、怖がらなくていいよ。俺が必ず、詩歌ちゃんを守るから。信じて?」

 横に座っていた詩歌の身体を引き寄せると、優しく抱き締めながら『必ず守る』と言った。
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